sweet pool
ニトロプラス キラルのsweet poolをプレイしました。
ネタバレしかないよ。
ストーリー:A
イラスト:B+
音楽:S
キャラクター:A
自分のお尻から、ある日突然違和感とともに肉塊が産み落とされる。
おまけに、クラスで特に苦手意識を持っていたイケメンに目を付けられ、強姦される。さらに、唯一仲良くしていた明るく元気な友達もメンヘラになり、挙句狂った同級生に絡まれる。
開始早々、主人公がえげつない感じでした。
「本能」と「理性」のどちらかを選択すると√が分かれる仕組みになっており、普段プレイしているゲームは文字での選択肢だけだったので、その点は新鮮でした。
こんな感じで、赤(右上)が本能、青(左下)が理性。どちらかをクリックすることにより物語が変わる形式。
BGM、エンディングが素晴らしい。どれも耳に残るものばかりで、世界観にマッチしている。
CGもゲームのボリュームに比べ多く、楽しめた。
エンドは全部で6つかな。
哲雄が4つ、善弥1つ、睦1つ。そのうち哲雄にグランドエンドが設けてありました。言わずもがな、sweet pool は哲雄がメインです。
攻略順は、
哲雄1→2→善弥→睦→哲雄3→4
です。
(正直哲雄1と2はあまり印象に残ってない)
・哲雄エンド1(融合)
オスの哲雄とメスの蓉司が身体を重ね、やがて融合し、肉塊になり、人ではない子孫を残すエンド。
姫谷のこと、これからの世界のことを考えると、考察しがいのある結末だった気がする。
人間としての生というよりも、「人間ならざる者」を産み落とし、愛し合った結果のお話。
ある意味では二人は、二人の選んだ幸せを全うできたのかもしれない。
・哲雄エンド2(姫谷に殺される)
このゲームのなかで一番バッドなエンドかな?
身体を重ねようとし、哲雄エンド1を目指しているときに姫谷があらわれ銃でバーン。呆気ない。
哲雄の過去がわかったり、黒幕の上屋がちょこっと出てきたりする。
姫谷の「坊ちゃんはなぜできそこないだったのか」という問いがまた切ない。
あんなにも翁長家の人間に寄り添ってきたのに、姫谷は最後まで蚊帳の外だった。彼も睦と同じふつうの人間だったが故に。ほとんど何も知らずに父親も善弥も失った。自分のすべてだった二つを失って、どうしようもない姫谷が見られるエンド。神様、彼にもどうか希望を。
・哲雄エンド3(同棲)
一番好きなエンド。
人ならざるもの(肉塊)を受け入れず、人間として生きたいと願って辿り着いた結末がこの√。
プールから飛び降りた「2年後」の話にいっきに飛ぶが、その2年間、哲雄と蓉司はずっと一緒に暮らしていたという解釈でオーケー?オーケーだよね。たった2年間だけど、2人は一緒にいられたんだよね。そう思わないとさすがに苦しい。
身体を重ねたオスとメスはいつか消えて(死んで?)しまう。蓉司はそれを理解していた。自分がいつ消えるか、わかっていたんですかね。哲雄もきっと気づいているかもしれない、と蓉司も言っているし、わたしもそう思う。
スーツで仕事へ行く哲雄を見送ると、「眠くなってきた…」という蓉司。そこでエンディング。
きっと蓉司はもうこの世にいない。消えてしまった。でも、幸せそうだったのだろうなと伺える結末だった。
人間として2人が掴み取った未来だから、これはハッピーエンドだとわたしは大声で言いたい!
行ってきますといった哲雄のCGが用意されていたんですが、彼のあんなに穏やかで満たされている笑顔が見れるなんて。
余談ですが、眠くなってきた…のくだり、某黒須ちゃんが寝るゲームを思い出しました。
・哲雄エンド4(哲雄が記憶喪失)
これが一応グランドエンドという位置付けだと思います。
プールに飛び込んだ後、哲雄は数ヶ月後に病院で目をさます。ヤッタ!生きてる!ハッピーエンド!?と喜ぶわたし。
だけど、哲雄のなかの「蓉司」の記憶だけが抜け落ちていた。蓉司の話を聞いても誰のことだか理解出来ないなんて、切なすぎる。
本来ならばオスの哲雄は治癒能力が高いのでこんなに意識不明の状態が続くわけはない…と思うのだが、哲雄を助けたいと願った蓉司によって、哲雄は普通の人間になったということなのかな。
となると、エンディング後、駅のホームに佇む蓉司の姿は、幻想?妄想?だということなんですかねえ。
蓉司が哲雄のことを身を挺して守ったわけだから…。
このグランドエンドの何が一番ツライかって、蓉司がいなくなり、せっかく認めかけていた哲雄も蓉司のことを忘れてしまったことにより、睦がどうなったかを考えることがツライ。
3人で出掛けようって話をしていたのに。脱メンヘラして普通の暮らしが出来るようになったのに。登校すると蓉司はいない、哲雄も蓉司を忘れてる、なんて、睦はまたどうにかなるんじゃないか…。
睦くんがどうか平穏な日常を送れますように。
それにしても、プール落ちの分岐で、「理性」を選ぶと、蓉司は生きたいと強く願い、哲雄を助け自分は消え、哲雄は記憶喪失のまま生きるエンドに。つまり「哲雄のなかで」蓉司は生きている、ということなのかなあ。切なすぎる。
「本能」を選ぶと、「哲雄を助けたい」と思う蓉司の姿が見られる。そして同棲エンド。記憶喪失にはならず二年間平和な生活をきっと送っていたのだろうが、蓉司は自分の運命を悟っていたし、やはり消えてしまう。
そう思うと、「理性」を選んで掴み取った記憶喪失エンドがグランドルートで、この物語の一番伝えたかった結末なのかなぁ、と納得できる。
「理性」は、ほかの動物も持っているには持っているが、人間以上にコントロールの効かないもので。動物は本能で動いてしまうから。
だからこそ、最後に「理性」を選べれば、二人はずっと一緒にいられるわけなんですね。
悲しい。切ない。やるせない。でも二人は幸せだったんだろうなあ。
・善弥エンド
狂ってる。でも狂わなきゃ生きていけない境遇だったんだ、善弥は。
人間としても不完全、オスとしても不完全。どう生きたらよかったんだろうね。
人間として生きたくても、夕焼け小焼けが邪魔をする。
オスとして生きようにも、自分は完璧ではないから蓉司を手に入れることが出来ない。監禁して子供を産ませようにも、善弥が完璧なオスではないから、生まれるのは歪な肉塊だけ。
善弥にどうしろっていうんだ!!!!!!!
一番悲しいと思った√だった。救いようがない。善弥は救われない。
一応そのほかの√では、自分の意思で動いた結果、姫谷に抱かれて息を引き取るものの。やっぱり、彼は人間として死ねず、オスとしても死ねなかったわけだから。どう見ても一番救われてないのは善弥だ。あと姫谷。
・睦エンド
食いしん坊な睦くんは、哲雄に蓉司を奪われるのが嫌で、蓉司を食べちゃいました。
カニバリズムエンド。
こんなところで男子学生の食欲を使わないでくれ・・・。マジかよ・・・。
蓉司を食べて字の通り蓉司を「自分のもの」にした睦だけど、それでも心も体も満たされなかった。
だから自分の腕を食いちぎってみた睦。痛くはない。でも満たされもしない。普段通りの睦に、クラスメイトも、そのなかの闇を伺うことは出来ない。完全に孤独になった睦。
「望みを叶えて手に入れたものは、底の見えない絶望だった」
という文章からもわかるけど、絶対、どう考えても、救われない√だった。
蓉司を自分のものにした睦。でももう蓉司に会えないことを知り涙を流す睦。
目の下にはクマが出来、憔悴し、食べても食べても満たされない。かつて心を満たしてくれたことがあった対象も、自分の手によりもうこの世界にいない。
睦√へは選択肢ですべて理性を選ぶと到達するのだが、蓉司(プレーヤー)が理性を貫いた結果、睦は理性を失い、自分の本能のまま、望んでいたはずの、望まれなかった未来を選んでしまった。
これもまた悲しいお話だった。
sweet poolは哲雄と蓉司のお話だから、善弥と睦は個人√で救われないんですね。
睦は共通√で脱メンヘラし、蓉司とも和解する。
哲雄のことも認めかけて、三人で出かけたいねとも言う。
だけど善弥は、どの√でも目に見えた「幸せ」は得られなかった。
彼は生まれたときからそういう運命だったのかと思わずにはいられないほど、救われない。
気付けば自分は完璧な人間ではなく。中途半端な存在で。オスでもなく。
メスの蓉司があらわれ一筋の希望を見出すも、自分とは違う完璧なオスの哲雄の前ではなにも出来なかった。自分は惨めなできそこないだと思わざるを得なかった。
ただひたすらに善弥が救われないお話で、全√終えて改めて善弥の登場シーンを見ると、胸を抉られる思いになる。
善弥が一番好きだったので、悲しい思いになりますね。彼がいつかどこかで幸せになれますように。
わがままを言うならば、善弥と姫谷の√が欲しかったかも。
善弥が蓉司に固執するのは、自分が不完全ながらもオスで、蓉司がメスだから、だよね。
だったらそういうの無しにして、姫谷とずっと一緒なエンドみたいなものもあったら良かったのにと思います。
姫谷も善弥も、恋とか愛とかそういうものではないもので繋がっていたように思う。お互いに依存していたとでも言えばいいのかな。
まぁ、そういう√がなくても大いに満足出来るゲームでした。胸のモヤモヤはとれないけど、哲雄と蓉司の2人を考えると、これで良かったんだなと思う。
ただ、何度も言うけど、善弥と睦が報われない部分が多すぎるだけで。
あまり大きな声で他人に勧められる作品ではない気はしますが、何度もプレイするたびに感じるものがあるゲームでした。
興味がある人はやって損はしないと思います。
ボリュームもそんなになく、綺麗にまとまっているので、ささっと空いた時間に出来ます。
おわり。